山長商店
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第2回 2013年1月19日 ゲスト:建築家 伊礼智氏

司会: 伊礼さんの山長とのきっかけの話にもありましたが、ソーラータウン久米川の時から「手頃なコストで良質な住宅」をという話があって、それが今の「標準化」という考え方におそらく至るんだろうと思うのですが、その辺りのお話を聞かせていただけますか。
伊礼氏: 「建築家は分譲住宅には手を出さない、建築家がやる仕事ではない」というのがあったんです。それを最初にやったのが宮脇檀さんなんですね。やっぱり1軒1軒、建築家が頑張ってどんなにいい家を造っても、日本の町は変わらないというので、彼はハウスメーカーと組んで分譲住宅をどんどんやり始めるんです。彼はものすごく一生懸命やって、今の分譲住宅の手法のベースを作ったのは宮脇檀さんなんです。僕は宮脇さんが大好きだったので、いつか分譲住宅をやってみたいと思って卒業設計のテーマも分譲住宅でした。それは「沖縄で分譲住宅を考える」というテーマで、沖縄の伝統的な外部空間をいかに現代に活かせるかみたいなことをやったんです。

そんなこともあってソーラータウン久米川の仕事では張り切ってやりました。そのとき僕は、「やっぱり建築家に住宅を頼むのは、お金持ちだけじゃなくて、一般の人でも頼んでくれたらいいのにな」と。でも、その頃僕が設計していた住宅は、コストが高いと言われていて、大工手間がかかるし素材もいい物を使っていてOMソーラーも入っていたりとか…。でもそれをクオリティを落とさないでなんとか手が届くようなコストに持っていけないかというのが自分の中でのテーマでした。相羽さんとも一緒に努力をして、質を落とさずに2割くらいのコストダウンは出来たんです。そういう努力をしていくためにも、「設計の標準化」っていうのは欠かせないものだと思いました。永田さんからは「とにかく安く」と言われながらも、でも質は落としたくない、町並みも整然としなきゃいけない。標準化を駆使してやっていこうということは、当初から思っていました。

実は僕は、独立する前にも「標準化」を事務所でやったことがあります。お世話になった、丸谷博男さんの事務所でなんですけど、芸大の出身ですからたくさん図面書くんですよ。凝った設計をするんです。そうなると当然値段が高い訳です。値段が高いだけじゃなくって、丸谷さんは建築家らしい建築家なので、毎回設計を変えていきたい、違う設計をやりたいという方なんです。徹夜で図面をずっと書き続ける日々でしたけど、ある日一緒に呑んでいて、「くたびれたから開口部周りだけでも標準化しよう」という話がでてきて(笑)、やったんです。でもその時はあんまり役に立たなかった。

理由は2つくらいあって、ひとつは丸谷さんは、毎回違うことをやりたいタイプなので、標準化してもあまり役に立たないんですね(笑)。ただ、理解するにはいいんです。新人などがおさらいをするのに。もうひとつは当時は手書きの時代だったので、ちょっと仕上げが変わると、また手でいちいち書いていかなきゃならない。そんなことだったんですけど、もう僕らが世に出た頃にはCADが普及していて、今こそやろうと思い、「部屋ごとの標準化」にしたんです。1坪の標準玄関とか、1坪の標準階段、標準浴室、標
準洗面所、1畳の標準トイレなど…、コアとなるところだけを標準化して、あとキッチン、ダイニング、リビングというのは家族によって大きく変わるだろうから、それは自由に、土地とお施主さんの要望に合わせてやろうということでやっていったんです。それで組み立てたのがソーラータウン久米川なんです。ついでに置き家具とか吊り戸棚などもある程度設計して値段も決めておいたんです。そうやってやれるところまでやりました。最初はコストダウンのためだったんですけれども、やっているうちに、同じことを繰り返してやっていると、施工の精度も良くなってくるんですね。向こう(現場)からもこれよりはこっちがいいとか、こうやったらもっと丈夫になるとかいうことが出てきて、改善をしながらやっていったんです。
伊礼氏: それと、「標準化」って言うのは、単に「早く安く」じゃなくて、「安くなるのにクオリティは上がる」みたいなところがだんだん分かってきた。多分、他の分野では当たり前にやっていることなんでしょうが、「建築ってのは一品であるべきだ」っていうのが建築家の世界では強いんですね。「世界にその場所にひとつしかないものをつくる」みたいなところがあるんです。確かに大きい建築はそれでいいと思うんです。美術館とか。でも、大きさによって一品もあれば、少量生産もあって、大量生産という建築の世界もあっていいだろうと思うんです。ですから、当時は一品と少量生産の間くらいの感じをを模索していたような感じでした。

そういうときに、クオリティってとっても意識するんです。「標準化」して約束されたものですから。「見た人も気に入っているからこれでいい」と仰ってくれるものも、これが造る人が変わったり、担当する人間が変わったりする度にばらつきがあっては困るので、ばらつきを少なくためには材料も全部吟味していかないといけない、ということでずっとやってきました。標準化していく方向が、意外とクオリティを下げない。品質を下げるものではなくて、建築として変な方向にいくのではなくむしろいい建築が出来上がるんじゃないか、そういう可能性があるんじゃないかと思っているんです。

だから普段は一品ものもやっていますが、標準化してきたことを活かしながら、常に両輪でやっていくみたいな。新しいことにも当然チャレンジもしますし、そのためにも信頼できる材料、信頼できる職人、信頼できる工務店っていうのは大事だなあと思いますね。メーカーも含めてですけれども。
榎本: 標準化していくことで、素晴しい建築家の方による、心地よい、住みやすい空間が大勢の人に提供できる訳ですよね。
伊礼氏: 木材の性能表示と似てるかも知れませんね。
榎本: そうですね、考え方がありますよね。
伊礼氏: 「見える化」をしていかなきゃと思っているんです。一般の人に。そのためにも作家として作風を明快にしたいと思ったんです。作風を明快にすることが、標準化を突き進めていって見える化することでもあると思っているんです。
榎本: なるほど。
伊礼氏: 尊敬する建築家、評価の高い建築家は皆、口には出さないですけどやっていると思います。 人間って意識しなくても癖がありますから、やっぱり長く経験を積めば積むほど、その人らしいって言われたものは、その人の定番であるっていうことだと思うので。しかし、どうしても標準化っていうのは、建築の世界ではいい言葉には聞こえないんですよね。「ハウスメーカー」とか「大量生産」とかのイメージがついてくる(笑)とかね。何か違う言葉はないものかと思うんですけれども(笑)。
司会: そこの違いは大きいんだけれども、標準化という言葉尻を捉えたときに、そういう捉え方をされる傾向は確かにありますよね。
伊礼氏: 建築っていうのは大量生産にはならないんです。仮に同じ住宅ばっかりうちの事務所でやったとしても、年間10棟くらいしかできないですからね。だからやっぱり大量生産とは違うんです。建築っていうのは現場で造らなきゃいけないから、むしろ品質のばらつきの方が怖いんです。例えばうちの担当者が新人で、さらに初めてつきあう工務店で、現場監督も新人だったなんてことが重なってくると、ものすごく品質が怖くなります。建築ほどばらつきの大きいものはないと。それをどうやってばらつきを小さくするかというのがとても大事だと思います。そのためにもある程度標準化はやっておきたいのです。
榎本: 洋服のプレタポルテって、ある意味で同じようなものではないですか。
伊礼氏: そうですね、洋服のデザイナーの仕事はファッションショーのときに新しいことにチャレンジしていって最大限力を発揮する訳です。あるいはお金持ちの人から特注で頼まれて、要望を聞いて、それなりのお金をいただいて創っていくのですが、それとはまた別に、一般の人たち、多くの人たちにも喜んで服を着てもらいたいから、あるサイズとかデザインを固定化して、同じものを沢山作って買ってもらうということもやっています。オートクチュールとプレタポルテの違いです。建築家も同じようなことをしていいんじゃないかと思うんですよ。

一般の人たちが、建築家に、きめ細かい設計で、注文住宅を思う存分頼めるだろうか?  というと、やっぱりなかなか頼めないですよね。でも、一般の人でも建築家が設計した、考えた住宅に住みたいと思っている人は沢山いると思うんです。それを、手の届く水準でメーカーなり工務店とかとチームを組んでリリースするっていうことは大事なことなんじゃないかなと思っていて、それをやりたいんですけど、なかなかコストを落としていくっていうのは難しくて。
ソーラータウン久米川でもさっき話したように、相場より900万も高いんです。土地も一緒とは言え、でも決して安いものではない。では、質を落としてまで安くしたいのかというと、それはやるべきではないだろうと。僕らの仕事ではないと思うんです。その辺のバランス具合がとても大事で、その辺が僕は山長と近いものを感じるところなんです。みんな「もっと山長が安かったら」って言うんですけど(笑)。でもそりゃ安くはできないでしょう、手がそれだけかかってるんだから… 。
司会: 特に伊礼さんの場合は、メーカーと協働して新しいプロダクトをつくるようなことも結構されていますね。ハーフユニットバスであったり、タニタさんの雨樋であったり。そういうメーカーとの連携というのは目指すところなんでしょうか。
伊礼氏: とても有難いんですけど、自分から持ち込んでいってというのは全然やっていないんです。たまたまOMソーラーに関わることになって、周りの工務店とかとつきあっている中でメーカーの人と出会ったりとかで、偶然なんです。相羽さんが居なかったら、山長さんのところに行くことがなかったかもしれないと思います。そんな感じで繋がっているだけなんです。僕は工務店に対してはあんまりアレルギーが無いので(笑)、逆に気が合うんですよ。建築家の中では、施工者とあんまり仲良くしないというか。
榎本: 普通は割とね。珍しいですね。
伊礼氏: 僕はそういうのが無くて、工務店の友達は友達って感じで付き合っていって、自然と「実はこんな物ほしいんだけど…」みたいなお酒の席の中での話から「じゃあそれやりましょう!」みたいなのが多いですね。例えば、僕が関わったのでは、高千穂さん(OMの加盟工務店)。火山灰をそとん壁にしたりとか、薩摩中霧島壁とかやっていますけど。
司会: 「伊礼色」があるんですよね(笑)。
伊礼氏: 高千穂さんは、昔は新築を沢山やってたんです、工務店として。工務店なのに、ああいう材料の開発を社長が始めて、僕は独立したての頃、高千穂さんとよく仕事をしていたので、新留社長には可愛がっていただきました。それで、「今度こういうものを開発するから意見をほしい」ということで、ちょくちょく開発のお手伝いをさせて貰っていました。薩摩中霧島壁のカタログの色を作ったの僕なんですよ。開発の最初は、3×6板の合板とか石膏ボードに塗ってみるのですが、それは大抵うまくいくんです。下地が伸び縮みしないし、ジョイントもないから。それで一回現場で試しにということでやったら、ジョイントが全部割れるんです。色も変わるし。これはどうしてだろう、分からないなという状態になりました。でも実はそれ以前(丸谷事務所時代)に同じような経験をしたことがあって、丸谷さんの意見でジョイントに石膏ボードと同じ紙を貼ると割れなくなったんです。それを覚えていたので、高千穂さんにそういうことがあったよと言ったところ、彼らはやっぱりしたたかで、早速、目地テープまで開発して一緒に売る訳です。それがものすごいスピードで面白かった。設計の仕事も沢山紹介して頂いたんですけど、ものすごくスピーディにやっていましたね。

今度はそとん壁を開発し始めるんですけど、そとん壁も僕のお客さんが第1号で試作でやってみたんです。本物の住宅1軒で。そうしたらね、ビリビリに割れたんですよ(笑)。それで発売が半年遅れたのかな。それが何で割れるかっていうのが最初はよくわからなかったんです。下地にモルタル塗ってから表面に火山灰のそとん壁を塗っていたんですけど、収縮が違うんですね。ですから彼らはモルタルの中に火山灰を混ぜたり、表面にすごい細かな火山灰の粉で特殊な仕掛けをして、表面1ミリだけで下地の防水をしているんです。それに上塗りをしていくんですけど、僕にもその特殊な仕掛けは教えてくれないのでうまく説明ができないんですけど。いろいろとお手伝いをさせて貰いました。

あと、木の引き戸が使えるハーフユニットバスがやりたいということで、岐阜にある小さなメーカーに交渉もしました。最初は手作りだったんです。中国から人を呼んで、育てて、訓練して、中国に送り返して、中国で工場を持って作らせているんですけど、やっぱり製品にはばらつきがあるんですね。そうすると忘れた頃に不良品が出てくる。使えないんですよね。補修くらいで済めばいいんですけど、それで済まないということになると、お風呂を壊さなきゃいけないと。大変な損害になるんですね。ちょっとメーカーの対応も良くなかったので、今ではもう使ってないんですけど。それもやりましたね。

それから、雨といのタニタさん。彼らはいかに綺麗な、かっこいいものが作れるかっていうのをやるんですけれども、「僕は雨といのために家を作っているわけじゃないので、雨といは目立たないほうがいいと思うんです。目立たない雨といで、塩ビじゃなくて、クオリティの高いものを」って話をしたら「じゃ造りましょう」と言われて、それからものすごいスピードでやってくれたんです。「ぱーっとこんな形で」とスケッチを書いたら、紙で模型を作ってきたんです。小さい家だとラッパの下の曲がりの首が長過ぎてバランス悪いから、ラッパも曲がりも小さくしたいとか要望を出したりして、出来た試作品を僕の設計したものに取り付けたんですね。それでいろんな設計事務所とかも見に来たんです。黙ってると誰も気づかないんですけど、「これはガルバの雨といで、今度作ったもの」とか言うと、「あーいいね」って話になって、正式な発売前から使われ始めてたりしました。最終的には首の長さを調整して発売したんですけど、ものすごく売れたらしいです。それがあってから、また別の建築家と箱型のを作ったように聞いていますけど、このシリーズが一番出てるんじゃないですかね 。
榎本: それまでの伝統的な工業ラインで作られたものしかなかったところに、そこへセンスを加えて、作品とマッチするような新しいものに作られていったと。
伊礼氏: 基本は自分が使いたいもの。こんな物がほしいとか、こんな色が欲しいとかってやっただけなんです。だからマーケティングとか一切無くって、自分のことしか考えないでやっていただけなんですけど、ただ、自分の設計のスタンスが目立つものを作ろうとかそういうことじゃなくて、もうちょっと佇まいのいい地味なやつとか目立たないものだったことが良かったんだと思います。
榎本: 先生が先ほど言われた「標準化」というものの中に含まれているようなものが、すべての部材に適応していけば、もっと世の中の建築界全体に大きな貢献がされるということになっていきますね。
伊礼氏: よくデザイナーがデザインしたプロダクトっていうのは、ライバルは使わない傾向があります。他の建築家が設計したものは使わないっていうのがあるので、タニタさんとも発売の仕方については絶対に僕の名前を出さないでということにしてもらいました。出さないんですけど、裏ではバレバレで、口コミだけで行こうみたいな(笑)。
榎本: 確かに建築家の方の心理ですね。
伊礼氏: この間亡くなられた奥村先生がOMソーラーを考えられたんですけど、奥村先生って建築界ではあまり知られていないんです。特に若い人たちには。知る人ぞ知るというか、知っている人は彼の凄さとか功績は分かっているんですが、あまり知られていません。何故かと言いますと、話題性のある建築をねらっていないのです。OMソーラーとか家具とか、自分の興味を一生懸命やった人なんです。でも彼がやった功績っていうのは、「みんなが使えるもの、みんなの役に立つもの」そういうシステムとか装置とかを作ったってことだと思うんです。ですから建築家は必ずしも建築としての作品だけじゃなくて、そういうシステムでもいいし、プロダクトでもいいと思うんですが、雨といひとつでも何か、みんなが使いやすいものを考えたってことだけでもいいんじゃないかという気がしますね。
榎本: 本当にすてきですね。
伊礼氏: どうしてもデザイナーとか建築家がやると、俺が俺がになって、他の人には使いにくいようなものが多くなったりするんです。今は誰もが使いやすいようなものをという傾向がかなり強くなってきたんじゃないかなと思います。
榎本: 先生の設計はどのパーツをとってもセンスのいい形になっているから、そういう物がタニタさんの雨といのように、他の人たちにも使っていただけるようなパーツになっていく可能性もありますね。
伊礼氏: そういうのもとても大事なことだと思います。今、住宅建築4月号で奥村先生の追悼特集を準備してもらっていてそれに関わっているんですけど、本当にそういう風に思いますね。世界にひとつだけというのを建築家はみんな考えるんです。世界にひとつしかないもの。それを実際に海外にわざわざ見に行ったりしてるんですよね。それはそれでいいんですけど、そうじゃなくて、身の回りに、あちこちに、もしかしたら気づいてないかもしれないんだけれども、これは建築家の誰々が考えたものなんだ、みたいなことって大事なことだと思うんです。奥村先生のOMソーラーも本当にそうだと思います。
司会: 今、いろんなメーカーさんの中でこういうものがあればいいなという話がありましたが、今後の山長に対してこういうものがあればいいなというような、今後の開発にどういうものを期待されますか。
伊礼氏: もう、それは今一緒にやっているi-worksプロジェクトで手伝って頂いているんですけど、i-worksプロジェクトは運営をOMソーラーに委託していますよね。いろんな条件を出したんです。OMの加盟工務店だけじゃなくて、OMとは関係のない工務店も入れるようにしてほしいとかいろいろ出した中で、「このプロジェクトで使う木は全部山長でやったみたらどうか」ということを言ったんです。で、「やろう」ということで、いろいろやっていって、それでいろいろ無理難題言って、枠周りもプレカットでとか、フローリングも出してとか、羽目板をやってとか、階段もやってとかいろいろなことを言って…。家一軒丸ごと山長のブランドっていうのは面白いと思うんですよ。
司会: 我々にとっても新たな試みが多いですが、なんとかうまくやっていきたいと思います。
榎本: 第1棟目が、もうすぐ完成というところですか。
伊礼氏:
もう1棟目っていうのは仕方がないんですけど、いろいろ問題を含んでいるんです。建築家って常に一品生産ですよね。常に問題を含んでいるんですけど、その反省を次の現場で活かそうと思っても、一品生産だと活かしきれないところが出てくるんです。i-worksの2棟目は三重で出来るんですけど、これだと1棟目の失敗とか反省を全部活かせるんです。僕は、一品生産だけに拘らないで、標準化されたものを繰り返しやっていくってことも、すごく大事だと思うんです。
榎本: 確かにその通りですね。
伊礼氏: 確かに住まわれる人とか、その土地の問題はあるんですけど、それはそれで対応しながらやっていくことは、とても大事だと思います。
榎本: 確かに、施工も標準化ということに関わってきますからね。
伊礼氏: 設計だけじゃなくて、施工もそうだし、いろんなことがパーフェクトにできるということはまず無いので、現場は皆でカバーしながら乗り越えていくっていうのは、それはそれでいいんですけど、でもやっぱり出来上がったのは100点じゃないですよね。でもその100点でないものを、今までいつもお客さんに、住まい手に引き渡してきているんですね。もっとより完成度の高いものができないのかっていうのがi-worksプロジェクトで、それを手が届くコストでと言っていますけど、なかなかやっぱり僕が関わると安くならないんです(笑)。でも普段僕の事務所で設計するよりは、総事業費としてはかなり安くできるということは確かです。
司会: 今のところの標準化の、ひとつのアウトプットの形が、i-worksプロジェクトということなんですね。
伊礼氏: そこに山長さんがどう関われるかというところを、逆に考えて頂きたいですね。
榎本: 初めて窓枠のプレカットとか、新しい試みが幾つかありますね。階段とか。
伊礼氏: 昨日現場に行ってきて、階段を組み立てたばかりで入れなかったんですけど、プラモデルのように面白いようにピタっとはまったと。ホゾとかがドンピシャだったということでした。それはやっぱりまさにプレカットのいい点ですよね。
榎本: 確かにそうすれば大工手間もずっと変わるでしょうしね。
伊礼氏: すごい心配していたんです。階段もプレカットで、段板の下部に(薄く見せるために)テーパーがついているので、うまくいくかどうかとか言ってたんですけど、ドンピシャでした。
榎本: それは良かったです。
司会: 今日はいろいろと面白いお話を伺いましたが、素材、設計、施工、家づくりの全ての面でばらつきをどうやって抑えるか、というテーマに集約されるように思いました。
伊礼氏: そうですね、ばらつきが多様化で楽しいっていうことならいいんですけど、品質という価値からすると大抵は良くないことばかりですよね。
司会: 伊礼さんが、ご自身の作品のクオリティを保つためにも、そして何よりも住まい手に対する品質責任を果たすためにも、その両方の面からばらつきを抑えていきたい。そのために「標準化」がある。その「標準化」を行うために、住宅を構成するひとつひとつの部材を伊礼さんがしっかり吟味をして選びぬき、場合によっては既成品にとどまることなく、新しいプロダクトの開発もされている。こう考えるとやはり、これは「標準化」という言葉でよく誤解して捉えられるような、同じ建物がずらっと並んでいるようなものとは、明らかに一線を画していると感じます。
伊礼氏: リーズナブルなコストは大事だと思いますが、決してローコストや少しでも安くという事とは違うと思います。永田さんが言ってたんですけど、「いいものはお金がかかるんだ」と。「かかるものはかかる」と。そうだと思うんです。世の中がこういう時代だけど、安く、安くというのは、やはり建築ではやってはいけないんじゃないかと思いますね。文化を壊しますね。
榎本: やっぱり木造住宅の場合は、建築家の方と、工務店がうまく結びつくというか、その形ができれば、本当に皆さんに質のいいものが提供されていけると思うんですけど、工務店と建築家のことは、ともすれば工務店側から言うと、建築家の仕事をすると損ばっかりするみたいな話で、なかなかお互いをいいように言わない風潮が多いですね。
伊礼氏: 確かに家づくりにかけるコストがすごく少なくなってきてるんですよね。僕の感じでは、今までより、総事業費は1割は減っているかなと思います。世の中がそうですから多分、設計事務所に頼んだお客さんは相見積をとって、より安いところを見つけて、さらに工務店は、下請けの業者に安くしろと言って、段々メーカーも値引かれていって…とか。ずっとそういうことをやっていて何もいいことないですよね。それをひとつ打開するためにどうするかって言うと、やっぱり一緒になって「プレタポルテの家」みたいなもの、つまり、ちゃんとした図面が揃っていて、それをスピーディに、よりクオリティを高く、再現性を持って創っていくというのは、ひとつあるんだと思いますね。皆で努力して無駄を省くという意味で、「プレタポルテの家」っていうのはいいと思うんです。やっぱり一品生産は無駄が沢山あるんです。失敗して壊してやり直せって、そんなことばっかりやって、やっと出来上がるのが一品生産ですから。それも結局は職人さんに迷惑かける方向にいってるので。一緒になって質の高いプレタポルテをそれぞれの地域とかでやったらいいと思います。工務店ごとでもいいですし。

設計の標準化は「丁寧な下ごしらえ」で、それをベースに、質の高いバリエーションに富んだよい家づくりができるのでは、と思います。
榎本: いい形の木造住宅が生き残っていけるような格好になるといいですね。ひいては林業の将来に、大きく関わってくることになるので。
司会: 今日は楽しいお話、本当に有り難うございました。

 

 

 

 

 

 

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