山長商店
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第2回 2013年1月19日 ゲスト:建築家 伊礼智氏


建築家 伊礼智 プロフィール

1959年沖縄県生まれ。1982年琉球大学理工学部建設工学科計画研究室卒業。
大学時代、吉村順三氏の時流に流されない誠実な仕事に感銘を受け、吉村氏が教鞭を執っていた東京藝術大学美術学部建築科大学院(奥村昭雄研究室)に進学。1985年、大学院修了とともに、東京藝術大学非常勤講師・丸谷博男氏の設計事務所「丸谷博男+エーアンドエーセントラル」に入所。建築実務の基本を叩きこまれる。1996年に独立し伊礼智設計室を開設。2001年、分譲住宅「ソーラータウン久米川」の設計で注目を集める。この時の設計手法「設計の標準化」は、のちの「i-works」の名称で注文住宅の世界へ広がるとともに、誰からも愛される意匠性と心地よさを生み出す巧みなプランニングで、脚光を浴びることとなった。建築界の“常識”にとらわれない「標準化」という方法論は、その後も年々共感の輪を広げ、現在は全国の建築関係者から講演や設計指導の依頼が相次いでいる。
司会: 山長と伊礼さんとは、おかげさまで長いお付き合いをさせて頂いております。
伊礼氏: そうですね。相羽さんと一緒にやった「ソーラータウン久米川」のときに、途中、構造材とかを吟味しながらやったんですね。このプロジェクトは出来るだけ手頃なコストの小さな住まい、若い人たちも住める、普段自分たちが設計しているクオリティの家を分譲住宅として提供しようというプロジェクトでした。全部OMソーラーが載っていて、自然素材に包まれた小さい家をということでやっていたのですが、時間がなくて、どんどん進んでいくんです。造りながら納まりはこれでいいのかとか素材はこれでいいのかとかやっていたんです。途中になって、相羽さんと迎川さんが「一緒に山長を見に行こう。あそこの構造材をちょっと検討したいので」ということになりました。あの頃は性能表示をしてくれるのは山長さんくらいだったんじゃないでしょうか。とてもいい材料があるから行こうと、3人で伺ったのが最初ではないかと思います。
司会: おそらく平成14・5年頃ですか。
榎本: ええ、そのくらい。10年位前ですかね。
伊礼氏: 3人で行って、1泊して、山からすべて見せていただいて、レクチャーも結構長かったですよね(笑)。じっくり聴かせていただいて、「あれはいい材料だ。やろう!」となりました。決して安い材料ではなかったと思うんですけど、あんなにコストにうるさい相羽さんが「是非やろう」ということになって(笑)、それを入れさせていただいたんです。
実際ソーラータウン久米川というのは、僕らはすごく理想を持ってやってたんです。分譲住宅を買う方は、予算に余裕のない方も多いので、どんなにいいものを造っても高いと売れないと言われてたんです。ですから監修で建築家の永田昌民さんからは「安くしろ」と言われ、相羽さんはコストダウンの努力をしながら山長さんに変えたんですね。品質の良さや安定性とかいろんなことから判断されたんだと思うんです。最初モデルハウスを建てて、どんどん建っていく途中から山長になったんですけど、初めの頃はちょっと売れない時期がありました。「とてもいい住宅だというのは分かるし、いい環境も出来そうなんだけれども、やっぱり高い」って言われていたんですね。僕らのは相場より900万高かった。不動産屋さんからはもう話にならないとまで言われてました。

それで僕らも、もう不動産屋さんに任せても売って貰えないだろうし、土地だけ売って、他の業者に…などとも考えてはみたものの、そうしたら僕らの考えたプランは総て崩れる。ましてや、既に住まわれている方が居る。そういうことをやっては約束が守れない。その人たちはせっかくいい環境に住めると思って買ってくれたのに、途中からそういうことをやってはまずいだろうということで、また勉強会を繰り返しながら売っていったんです。

その時に、山長の木に変えたところ、山長の木は性能表示をしているので、営業は説明がしやすいんですね。当時、若い人たちはあんまり構造とかには興味なかったと思います。構造見学会とかでも、感想や質問など何も書いてもいないですから、分からなかったと思うのですが、実際にこうやって性能表示がされて営業の人から説明を受けると、すごくわかりやすくなったと思うんです。また大抵はお父さんお母さんが資金援助をしていたりで、一緒にいらっしゃるんですが、ご年配の方からは「ここはいい材料を使ってる」ととても高い評価を頂くようになっていき、それからトントン拍子に売れ始めるんです。だからソーラータウンが売れるようになったのは、ある意味山長さんがきっかけだと思います。
榎本: そうなんですか、それは光栄です。
伊礼氏: 本当にそうなんです。迎川さんもそう言っていました。山長に変えてから売れ始めたと。
榎本: モデルハウスが出来てからかなり経ってになりますが、私も見に行かせて頂いて、なんてまあセンスのいい家が建っているんだろうと思いました。なんて言うか、空間が非常に決まっているというか、そして暖かい雰囲気が実にうまく調和していて、小さいながらも非常に神経があちこちに行き届いていて、それでシンプルでありながら細部の仕上げにしてもセンスがいいところがものすごく印象的だったんです。こんな家だったら本当に住みたいなと。それがその後のi-worksにずっと繋がっていって、先生の作品の中に使って頂いているのが、本当に嬉しく思っているんです。
伊礼氏: 設計をやっている人間でも、山を見たことがない、製材所にも行ったことがない人たちって割といると思うんですが、普通の大学では木造も教えないし木についても教えることが殆どないので、僕も相羽さんと山を見に行って、「山で木をどうやって育てていて、それをどうやって製材して、管理して」みたいなことを一貫して見れたのは、山長が初めてだったんです。そういう材が自分たちのところに届いて、山と繋がっているということを実感したのがとてもよかったと思っています。
榎本: なるほど。
伊礼氏: 僕の設計というのは、木をふんだんに使った和風の建築とはちょっと違っていて、どちらかと言うと、もう少し一般の人たちにも手が届いて、出来るだけ多くの人たちが住み心地がいいと感じてくれるようなテイストでと思っているのですが、山長を見たときに何か近いものを感じたんです。誰もが手が届く、多くの人に使ってもらいたいクオリティの高いものというのがやっぱり自分の目指すところなので、それがとても合致してるのかなあと。あの時は、相羽さんも一緒でしたけど、相羽さんもたぶん同じことを感じられてたんだと思います。だからその後は山長がずっと標準です。
榎本: 本当に有難いと思います。山から繋がって家までという話ですけれども、これまで私たちは過去は製材までしかやっていなかったんですね。それがプレカットまでやるようになって初めて工務店さんと直接お付き合いするようになり、また建築家の方ともそういう形の中でお話したりお付き合いするようになりました。結局、どう具体的に使われていってるのか、それが悪かったら必ず私どもにクレームとして戻ってくる訳ですから、そういう形の中でお届けする物は、製品もそうだし、加工の内容もそうだし、一貫して自分たちが責任を持たなきゃいけないという感覚というのは持っていました。従来の製材という形でしたら、その後に流通というのがあって、そこではどういう方に買われているのかも分からないし、どういう用途で使われているのかもわからない。しかしまあ買っている方はその中にいい物も悪い物もあったとしても、その中で選択して大工さんに販売している訳です。けれどプレカットで一軒の家が組み立てられるとなると、どういう形で使われる木材なのかという選択の責任が我々にある。だからそういうところが、今までとはものの考え方が最も変わったところです。

 

山まで繋がっているプレカット工場は「大きな信頼」JASによる性能表示は「大変な保険」

 

伊礼氏: プレカットというのはすごく大きなポイントかなと思うんですけど、多分、僕らも今プレカットがなくて現場に昔ながらの目の利く棟梁がいたら、意識が現場止まりだったと思います。でも今9割以上がプレカットでの家づくりになってきて、だんだん腕のいい大工さんも少なくなってきたこの時代、山長のようにプレカット工場の中に目利きがいて、ちゃんと木を吟味してやってくれるというのはとても大きなことなんです。実は、知り合いの工務店の現場で、他のプレカットからきたものを組み立てたところ、何本か逆さ柱が入っていたりということがあって大変な騒ぎになったんですけど、そんなことも起きるような時代に、信頼のできるプレカットの工場、しかもそこが山まで繋がっているというのは大きな信頼ですね。さらに、JASによる性能表示がされているというのは、僕らにとっては大変な保険なんです。
本当に信用できる棟梁がいればお任せできるんですけど、そうではなくなってきた、そういう時代になってきたということが大きい。ですから実際に自然素材とはいえ、これが本当に隣同士で立っている杉でも性格が違うなどということを教えて頂いて、実際にそれを検査して確かめたうえで出荷しているというのは大きいですよね。僕らも「自然素材が」っていつも言うんですけど、自然素材ほどばらつきがあって不安定なものはないことはよく分かっているので、そういう点ではすごく山長さんのレクチャーはしっくりきます。 あと、僕は芸大の奥村研究室の出身で、奥村先生は感覚的な設計、デザインっていうのはあんまり好きじゃなかったんですね。「感覚的な話っていうのは信用できないし、何が正しいかもわからない。やっぱり物事は科学的に考えないとだめだよ」とずっと言われ続けてきました。先生は、その後OMソーラーを開発するんですけど、すべて「科学」しているんですよ。家具のデザインもやっていましたけど、センスとか感覚でデザインしているんじゃなくて、全部木を科学してすべてデザインしていたんです。家具もそうだし、生ハム製造機なども、売り出したりしてたんですけど。
榎本: そんなものも…。
伊礼氏: それも全部データをとって「科学」してやってるんです、すべて。暖炉の中の熱計算も、彼が世界で初めてやってるんですけど。そういう人でしたから、僕もあんまり感覚的なことだけでいい悪いっていうのは好きではないですね。何かやっぱりきちんとした理由があって、だからこれがいいとか、この寸法だみたいなことを判断したいと思っているんです。そういう点で、山長さんは非常にしっくりきますね。
榎本: 確かに私たちもずっと長いこと製材、林業というものをやってきて、昔からいい木だということは言われてきたんですけど、昔は一般の人にしても、大工さんもそうですし、工務店にしても、皆、木を見分ける目を持っていたんですね。ところがだんだん外材中心の文化になり、それに集成材も入ってくるという中で、やっぱり無垢材のいい木を、ちゃんと見れる人が居なくなってくる。しかしいろいろ計測をしてみると、紀州材の素晴らしさは数値上に出てきます。強度もそう。しかも目もこんでて、材も綺麗だと。そういう中で、これを数値に表さない手はないなというところから出てきたんですね。

最初はただ単に表示していただけだったんですけども、実際の現場では、ヤング係数の高い強い木が2階に使われていて、実際負担のかかるところに数値の低いものが使われていたりとチグハグで、もうちょっとどうにかならないのかという話がでてきたりもして、その通りだなと。そのようなことで、今はスギなら強度の高いE90以上の木を1階に使って、2階にはE70のものを使う形で配置しています 。
伊礼氏: 今、やっぱり一般の人にも説明しなければいけないですね。社長が仰るように、一般の人が昔持っていた知識がなくなって、尚更ちゃんと説明しなければいけない責任がある時代に、山長のように検品をして性能表示をしてということをやってくれると、非常に僕らも助かります。僕らも木に関しては分からないところがまだたくさんあるんですけど、毎日それを使って、それでいて自分で組み立てたりしている訳じゃないので、設計している人間っていうのは分かっているようで分かってない。僕は、3回山長にお邪魔して、3回レクチャーを聴いてますが、繰り返し繰り返し行かないとやっぱりわからないところが一杯あるなあということが実際よくわかってきました。

何年か前に、木で造る家の講演会やってくれということで、僕は真壁なんかあんまりやってないしと言ったんですけど、そうじゃなくていいからということで話すことになりまして、半分山長の話をしたんです。山長の営業マンくらい喋れるかもしれません(笑)。繰り返しレクチャーを聞いた中で大事なところは分かっているつもりなので、とても面白かったですね。

 

設計の「逃げ」を小さくできる山長の木材

 

司会: 山長も、このように特定の設計士さんとの深いお付き合いというのはそうそうある訳ではないんですが、やはり山と工務店、山と設計が直接繋がる、あるいは距離が近いというのは、設計士さんにとっても工務店にとっても意味のあることではないかと思いますが、いかがでしょうか。
伊礼氏: そう思いますね。自分も素材をあれもこれもというようには使いません。これは永田さんから教わってきたことなんですけど、「信頼できる職人、信頼できる工務店と仕事をする」。それと同じように、素材も信頼できる物しか使わない。だから永田さんは常に漆喰。使うものを決めているんですね。新しいものが出たから使ってみるということを殆どやらない人なんです。僕もやっぱりそうなんです。作風を明確にして、大事にしたいと思ったらそうなるだろうと思います。だから僕は、開発のお手伝いをさせてもらった材料だったり、実際に見てきて納得のいったものしか使ってないので結構、種類は少ないです。それは構造材も一緒で、本当に理解してやってることが大きいだろうなと思いますね。
司会: 今、木材業界と使い手である工務店、設計の間で、国産材の利用については依然ギャップがあるのが現状です。工務店・設計士の信頼を受ける「木材」ひいては「建築材料」とはどのようなものか、伊礼さんの場合はどういう観点から見ていらっしゃるんでしょうか。
伊礼氏: たとえば、最初に山長さんとソーラータウンの仕事があって、あの頃迎川さんが言っていたのは、「割れが少ない」とか「品質のばらつきが少ない」ということでした。これは僕らにとってはとても助かるんです。特に僕の設計って、あんまり柱や梁を見せないんですけれども、見せる時でもあまり和風の手法をとらないんですね。例えば、化粧柱も面とらないんです。シナベニヤとかもよく使うんですけど、化粧柱とベニヤを面(つら)で納めるんです。目地逃げだけで。でもそこであばれたりとかすると、どうしても目立ってしまうんですね。逃げが少ないことをやっているので、そういう点で、安定してるのは助かりますね。
司会: やはり設計士さんや、工務店さんのやりたいことが出来る材料、ということですか。
伊礼氏: それに耐えられるというか。多分そうじゃなければ、それなりの「逃げ」を持った納まりになってくる。そうなるとやっぱりテイストも変わってくるんですね。和風な感じになるんだと思います。僕らは今の時代でなんとか心地いい住宅っていうのを造りたいと思っているんですね。伝統工法も尊敬はしますけれども、やはり今の時代とはちょっとずれている部分があるので、今の時代で手頃なコストでクオリティの高いものをやろうとしたときに、やっぱり山長の素材は時代のニーズに、ぼくらのニーズに合っているのだと思いますね。

建具ひとつをとっても、僕は木製建具をよく使うんですけど、乾燥の問題っていうのは大きいですね。家具にしても構造材にしても。乾燥っていうのは昔の日本ではあまり重要視されてなかったんですけど、今はかなり比重が大きくて、すぐクレームにつながるので、木製建具にしても乾燥が甘かったりしてちょっと反ったりすると、そのままでは済まなくて直さなきゃいけないことになります。自分ではそんなつもりはないのですが、わりと細かい設計をしていると言われることがあるんです。図面もミリ単位で確かに書きますが、それが成り立つためには本当に素材がちゃんとしていないとどうしようもないんです。そうでなければ、木の動きとかも読みながらのまた違う設計になってくる。その逃げをどうするのかということを考えないといけない。当然木の動きとかを読み込んで逃げを見ながらやってはいるんですけど、山長の木だとそれがとても小さく済んでいる。逃げが小さい建築ってやっぱり全然違うんですね。緊張感というか。緊張感って言葉は僕はあまり好きではないんですけど、綺麗ですっきりしていても、逃げだらけだと「だるい感じ」がします。そういう自分が考えるクオリティの高い建築っていうのは、読み込みは必要ですけど、最初から思いっきり逃げているようなものではないので、そういう点では、山長さんの木は助かります。
榎本: 有難うございます。私たちも乾燥の問題は真面目になんとかいい乾燥ができないものかとずっとやってきています。ただ、乾燥というのはものすごく奥が深くて、なかなか完璧にはいかないんですけれども、出来る限りの現代の技術の中で、最善のものを目指すという姿勢を持っています。それともう一つは、自然物なので、乾燥材にしてもいい物から悪い物までいろいろある訳ですけど、選別を常にかけて安定した品質の物をお届けするということを真面目にやっている。その辺がうちの取り柄かもしれません。
伊礼氏: グレーディングマシンを見せてもらいましたけど、あんなに『はじいている』とは思わなかったです(笑)。グレーディングマシンがなかったら、あれが全部現場に来ちゃう訳ですよ。あれを実際に見るとなるほどと思います。
司会: 初期に性能表示が進まなかったのはその問題もあるんです。製材所としてはそういうものを表示しなければ全てを同じ値段で出せるんですけど、表示することでいい物が高く売れる保証はないし、確実に悪い物は売れなくなるということで、当初、製材所側では導入に及び腰になっていたところもありましたね。
榎本: 特にうちもJASマークを印字し始めてからは、その辺のところが一層厳しくなりました。特に含水率の問題等どうしても出てきますので、いろいろな形のニーズに対応する形で販売をしています。お客様の使い方によってはそこまでの商品は必要ない、というところもありますし、その辺全体としてバランスをとっている格好なんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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